sandscape / Kuroda Takeshi
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installation
2000's
2009
6×3≠18 #10
2009
6×3≠18 #09
2001
CLASS ROOM (2001-mix)

「CLASS ROOM」 について
 インスタレーション「CLASS ROOM」は今までに四回展示が行われ、大まかに分けると二つのバージョンがあります。一つは教室のイメージそのままに机と椅子が配置され正面に映像が流れるバージョン。もう一つはサークル状に配置された机と椅子の中央に巨大な顕微鏡を覗くように映像が流れるバージョンです。この写真は後者の方で、映像は砂のスクリーンに写り、その砂には壊れかけの錆びたジャングルジム(ミニチュア)が埋まっています。
  この「CLASS ROOM」は、僕が実際に見た夢をモチーフに物語を造り、同じ頃たまたま行ったライブの演奏を聴いている時に浮かんだビジョンを組み合わせて造られました。この作品を考えている時(1997年・春)「酒鬼薔薇聖斗」事件が起き、「エヴァンゲリオン」のムーブメントが静かに起こり始めた頃でした。「14才」がキーワードにされ自殺やいじめが、やたらと報道されていました。この作品はそれらに対する僕なりの答え(決して解答ではありません)でもありました。そして2001年にこの写真の「2001mix」の展示を行ったのですが、この前年映画監督の「スタンリー・キューブリック」が21世紀を見ることなく、亡くなってしまうという暗示的な出来事がありました。「2001年宇宙の旅」は僕に多大な影響を与えていると思われ、この出来事は偶然とは思えませんでした。
 さて、作品の話に戻りますが、この「CLASS ROOM」は役者不在の演劇的空間の実験といった側面もあります。それは、鑑賞者が椅子に座り映像やオブジェを見ている時に、後からやって来た鑑賞者には、その人がパフォーマーのようにも見えてしまい鑑賞者そのものが登場人物になっていくという、入れ子構造を持たしたからです。これはこの作品のための物語やオブジェ自体にも言える事で、全てが入れ子構造になっていく様な造りになっています。2000年・東京での展示では、女子高生が制服で全ての椅子に座り、前面に映し出される映像を静かに見ていると言う状況があり、僕の知らない内にパフォーマンスが始まったのかと思ってしまいました。また、2003年・大阪では、机の上に置いてあったコップに入った水(もちろん作品の一部)を、自分でも知らない内に飲んでしまったと言う人も現れ、思わぬ催眠作用まであるのかと驚いています。まだ発表はしていませんが、机を一つだけ使ったミニマムなバージョンも考えていますので、こちらの方もご期待下さい。
 以下にこの作品を造るきっかけになった僕の見た夢をモチーフにして造った物語を記しておきます。「CLASS ROOM」のバック・ストーリーとなるモノです。
 
 
B a c k S t o r y
「八月のロケット——三つの夢の記憶」

 この物語りは一人の人物が、夏休みに田舎へ帰る列車の中で「子ども時代の自分」の夢を見るところから始まります。ところが夢の中の「子ども時代の自分」は夏休みの教室で「オトナになった自分」の夢からさめるのです。『胡蝶の夢』の噺のようにどちらが本当の自分か解らなくなってしまいます。そして場面は変わって真っ暗な宇宙空間、誰もいなくなってしまった巨大な宇宙船が、たった一人で旅を続けています。たくさんの人達の気配とか、記憶といったモノだけを乗せて彼は今も何処かを旅しているのです。
 宇宙を旅したはずの2001年を過ぎても、人類は未だに月軌道よりも外に出ることができないでいます。それでも僕らの想像力は、光のスピードさえ超えることができるはずです。僕らはいつでもそこにいて、世界はつねにそこに在るのだから。